ホーム > 調査 > アカデミーリサーチ vol.22 食の衛生管理に関しての意識調査を実施しました。

アカデミーリサーチ

vol.22

食の衛生管理に関しての
意識調査を実施しました。

食品を安全に提供するためのHACCP(ハサップ)について、
今回は施設や店舗における教育に関する調査結果を紹介します。

食の衛生管理に関する調査“HACCP教育篇” 食の衛生管理に関する調査
まずは、HACCPに関する知識や理解度について聞いてみました。

Q. HACCPを導入していますか?

HACCPに関する知識や理解度 HACCPに関する知識や理解度(店舗規模別)

HACCPの理解度は店舗規模に相関?
51人以上の店舗
約8割が理解している

勤めている施設や店舗におけるHACCPの理解度について聞きました。全体では、施設や店舗におけるHACCPの理解度は「理解している」+「やや理解している」と回答した人が60.9%となりました。
店舗規模別にみると、規模が大きい51人以上の店舗で77.4%、次いで11人以上20人以下の店舗で72.8%となりました。「理解している」と回答した割合を見ると、店舗規模が大きい程、理解度が高くなる傾向がありました。

次に、衛生管理の教育や意識付けについて聞いてみました。

Q. 衛生管理の教育や
意識付けはしていますか?

「小規模店舗」「非責任者」は
実務を通して習得、
または学ぶ機会が少ない

HACCPの教育は、全体では「社内でオンライン研修」と「業務を遂行しながら習得している(研修は特にない)」がそれぞれ約3割となりました。
店舗規模別に見ると、規模が大きいほど研修制度がある場合が多く、「自社に講師を務める人がおり、社内で研修を受けている」「社内でオンライン研修を受けている」割合が高くなり、小規模な店舗では、学ぶ機会が少ない傾向となりました。
また、役職別に見ると、「責任者」は教育を受ける機会が多く、「非責任者」は実務を通して習得したり、そもそも学ぶ機会が少ないことが伺えます。

どういったことが衛生管理の知識向上や意識付けにつながるか聞いてみました。

Q. 衛生管理の知識向上や意識付けに
つながると思うものは何ですか?

「事例や重要性の共有」は共通、
店舗規模により
「一体感」や「人事評価」

HACCPを含む衛生管理の知識や意識向上につながると思うものとして、「食品製造時の事故や食中毒の事例を共有する」「衛生管理の重要性を共有する」ことが上位に来ました。責任者と非責任者の比較では、非責任者において「事例」や「重要性」の共有や「チェックリスト導入」が衛生意識の高まりにつながると考えている傾向が高いことが分かりました。
また、店舗規模別で特徴的なのは、11以上20人以下の店舗では一体感を重視する「責任者や同僚など周囲も一体となり食の安全に高い意識で取り組んでいること」がTOPとなり、51人以上の規模が大きい施設や店舗では「人事評価に反映される」ことが意識や知識の向上につながると考える傾向がありました。

職場の信頼関係を構築するために必要なものを聞いてみました。

Q. 職場の信頼関係を構築するために
必要なものは何ですか?

衛生管理に起因する事例や取組の重要性を共有するだけでも、従業員の知識や意識向上につながりそうですね。教育制度以外にも従業員の職場への「帰属意識」は自発的な学びにつながったり業務に関わる知識を深く理解することにもつながると考え、最後に、少し視点を変えて職場の信頼関係を構築するために必要と思うものを調査しましたので紹介します。

職場の信頼関係、責任者は
「一体感」、
非責任者は「自立」
に関する割合が高い結果に

職場での信頼関係構築につながると思うこととして、責任者は「一体感」につながりそうな項目を選択する割合が高く、一方で「非責任者」においてはお互いに仕事を任せ合えるような「自立」に関する割合が高くなりました。共通しているのは責任者も非責任者も「コミュニケーション」を重視しており、不明点を聞きやすいことや、体調等の異常に気付いたら声をかけやすい環境など、互いに気遣いを感じられる環境、孤立しないような配慮が信頼関係構築につながると考えているのではないでしょうか。

アンケート調査概要

  • ● 調査地域:全国
  • ● 調査対象:全国 男女18~69歳
    調理責任者・調理担当者 (アルバイト含む)
  • ● サンプル数:本調査521
  • ● 調査機関:
    2021年9月10日(金)~9月14日(火)
ワンポイントアドバイス

食品問題のプロフェッショナルに聞く! 知っ得なっ得情報

HACCPの効果、食中毒予防
以外にも
期待できることを
専門家に聞きました

HACCPを通して
連帯感と
信頼感を
高めることができる

HACCPの理解度の調査結果では1~5人までの小規模店舗は、一番低い値でしたが、それでも約半数(44.9%)の人が理解しています。5人のうち2人が理解できていれば、残りの3人に教えることはそれほど難しいことではありません。この数値は「徐々に理解者が増えていくに違いない」という非常に希望が持てる結果と言えます。

具体的な教育機会については、何度も申し上げていますが、HACCPは「チェックと記録」です。決して難しいことではないので、学ぶ機会がないという方は、是非、最寄りの保健所や業界団体等に相談してください。

何が衛生管理の知識・意識付けの向上につながるかという調査では「食品製造時の事故や食中毒の事例を社内で共有する」「衛生管理の重要性を共有する」がいずれも40%を、さらに「責任者や同僚など周囲も一体となり食の安全に高い意識で取り組んでいること」も23%を超えています。HACCPを実行することで、連帯感(チームワーク)が生まれることに期待している人が多い、あるいはすでに実感している人が多いということです。

職場での信頼関係構築につながることは何かという調査では「お互い安心して仕事を任せ合うことができる」「同僚や先輩・後輩の体調や精神面での異常に気付いたら声をかけやすい雰囲気がある」「不満や疎外感などを軽減できるようなコミュニケーションが取れる」という声が多く、店舗にとってHACCP導入が様々な効果を生み出す可能性を示唆しています。

今回の調査結果では「HACCPによって連帯感が生まれ信頼関係構築にも期待ができる」ということがよくわかります。義務だから仕方なくHACCPを導入するという姿勢ではなく、「HACCPは店舗にとって様々なメリットがある」ということを信じて積極的に取り組むと、食中毒予防以外にも様々な波及効果をもたらしてくれるでしょう。

アドバイザープロフィール

ビジネスマナー講師 谷澤 優花

消費者問題研究所代表
垣田 達哉

慶應議塾大学卒業。現在、消費者問題研究所代表。
食品問題のプロフェッショナル。
放射能汚染、中国食品、O157、BSE、鳥インフルエンザ、食品偽装問題などの食の安全や、食育、食品表示問題の第一人者として、テレビ、新聞、雑誌、講演などで活躍している。

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