vol.28
家庭のおそうじに関する
意識調査を実施しました。
家庭のおそうじについて様々な視点で調査した結果、時短、省力化に加え環境配慮など、意識の多様化も見えてきました。
Q. 家庭のおそうじを
どんな方法でしていますか?
汚れを落としやすくする
ポイントを押さえておそうじを
している人は約7割
少し焦げ付いた油汚れの落とし方として、“最初”にすることを聞きました。半数の人が「洗剤をかけて時間を置く」と回答し、次いで「お湯などで温める」が15.8%となりました。最近はコンロなども汚れを落としやすい材質に変わってきていますが、「時間を置く」・「温める」という汚れを落としやすくするポイントを押さえておそうじをしている人は約7割となりました。
シップ法
洗剤をかけたら、ラップやペーパータオルなどで汚れを覆い、洗剤と汚れの接触時間を長くすることで、汚れを落ちやすくします。
女性の50代以上は7割以上が
シップ法を知っている
汚れ落としを楽にするシップ法、知っている人と知らない人の割合は半々となりました。
実際にシップ法を取り入れている人は全体の3割となり、手軽なおそうじ方法方ではありますが、まだまだ知られていないことが分かりました。少し詳しくデータを見ると女性の年代が上がるにつれてシップ法を知っている割合が高く、50代以上では7割以上が知っていると回答しており、知識の幅が広いことが分かりました。
Q. 浴室の『カビ予防』として
行っていることはありますか?
カビ予防は手軽に
済ませている人が多い
浴室のカビ予防は「浴室の乾燥・換気を行う」が最多となりました。次いで、カビ予防はしておらず、発生したら対処すると回答した人が23.7%となりました。
落ちにくい汚れの代表的なカビですが、予防は手軽に済ませている人が多いことが分かりました。一方で、2割の人はカビ予防効果のある煙剤を使用したり、水滴を除去するワイパーを用いてカビ予防に努めていました。
Q. おそうじに再利用している
物はありますか?
女性50~60代は様々なものを
おそうじに再利用
再利用品をおそうじに活用しているか聞きました。全体では歯ブラシや使い古したタオルなど便利に使える物をおそうじに使う人が多いようです。一方で、柑橘類の皮やお茶殻を再利用しているとの回答もあり、全体から見ると僅かですが、昔ながらのおそうじ方法をしていることがうかがえる回答もありました。
女性50~60代は全ての再利用品で全体を上回る回答となり、様々なものを再利用していることが分かりました。毛糸でスポンジを編むなどおそうじに使えるようにひと手間を加えるなど、工夫している人が多いことも特徴的です。
アンケート調査概要
- ●調査地域:全国
- ●調査対象:男女 20~60歳
- ●調査期間:2022年7月25日(月)~7月27日(水)
- ●有効回答数:400サンプル
日本モダンガール協會 淺井カヨさんに、
大正時代のおそうじについて
お話を伺いました!
時短が主流な現代のおそうじについて調査結果を紹介してきましたが、最後は時を遡り大正時代のおそうじについて、当時の生活様式そのままの暮らしをされている淺井カヨさんに当時の興味深いおそうじのお話を教えていただきました!
大正時代の
おそうじについて
大正元(1912)年に發行された前田不二三著『掃除について 掃除法改良意見』は、小冊子であるが當時の掃除について知る上で非常に興味深い内容である。掃除が衞生上大變重要であること、舊來(きうらい)の掃除法が間違つてゐたこと、精神的にも掃除が必要であることなども記されてゐる。屋内掃除について次のやうな記述がある。「雜巾には何がよいかを云(いふ)と西洋のタヲルが一番よい、何となればタヲルの織方は拭く時に最も都合よく塵埃(ごみ)を吸收するやうになつて居るからである。西洋手拭の古くなつたのを取つて置いて、それを皆雜巾に使ふが宜しい。」今でこそタヲルを掃除に使用することは珍しくないが、111年前に推奬されてゐたことに驚愕した。 空氣の掃除と云ふことや、机の上や塵(ごみ)のたまる場所を“拭きとる”こと、「雜巾の色は白いものに限る」、雜巾だと思つて汚くしてはいけない、「手拭と同樣にシヤボンで洗つて極清潔にして置かなければ行けない」などとあり、まるで現代の掃除について書かれてゐるかのやうである。昔の掃除と言へば箒やハタキで埃を舞ひ上がらせることを想像するが「西洋の建築に從來の日本風の此の箒とハタキの掃除法は全く適しない」と小冊子には書かれてゐる。ハタキの重要性を取り上げる書物が多い中で、生活樣式の變化から樣々な意見があつたことは面白い。箒については、熊手形にして粗い毛か棕梠(しゅろ)がよいとある。現在、私は大正から昭和初期の文化住宅を參考に建てた家「小平新文化住宅」で當時の暮らしを幾つか取り入れた生活を送つてゐる。毎日の掃除では棕梠の箒や白いタヲルの雑巾を愛用し、頭に手拭を巻き白い割烹着を使用すると、殊の外作業が進むのである。棕梠の箒は感触がよく、毎日触つても飽きることがない。自然素材を使用した掃除道具は違和感がなく心地良い。ちなみに大正14(1925)年の川島源司著『趣味の科學 第一卷』には「眞空掃除器」の説明があり「これを一度かけると床上又は器物はこんなに澤山の塵埃があつたのかと思ふ程よく吸ひ取るものである」と紹介されてゐる。當時の眞空掃除器は高價であり普及はしなかつたが、眞空掃除器の紹介は同時代の書物でも時々見かける。以前に骨董市で古い眞空掃除器を試したら、それは工事現場のやうな音がしたので諦めたことがある。そこで現代のコードレス掃除機を使用してゐるが見た目が暮らしに合はず、普段は隠して使用してゐるのだ。
引用
『掃除について 掃除法改良意見』著者:前田不二三 出版年:大正元年
『趣味の科學 第一卷』著者:川島源司 出版年:大正14年
アドバイザープロフィール
1976年愛知県名古屋市生まれ。愛知県立芸術大学美術学部デザイン・工芸科デザイン専攻卒。一般社団法人日本モダンガール協會代表。幼少期に博物館明治村と日本大正村に興味を持ち、大正末期から昭和初期のモダンガールについて大学時代から憧れを持つ。2007年に日本モダンガール協會を設立。モダンガールやその時代の生活文化の調査、研究、講演活動などを続けている。大正・昭和初期を取り入れた暮らしを実践し、大正から昭和にかけて建てられた洋館付き住宅を参考にして2016年に東京都小平市に小平新文化住宅を新築し居住した。蓄音器鑑賞会や建物紹介などを開催したり、自身の暮らしぶりも発信している。著書は、原書房『モダンガールのスヽメ』。